はじめに
今回は、左利きの人は頭がいいということは本当か?ということを考えていきます。
何をもって頭がいいというかも悩ましいところではありますが、今回はIQが高いということを頭がよい、という定義で考えていきます。
IQが高い人が会員になれるというメンサ会員なるものがあります。
このIQが高いといわれるメンサ会員の内で、20%が左利きだと言われています。
これに対して、全世界に存在する左利きは、全人口の10%だと言われています。
さて、果たしてIQが高いメンサ会員の左利き20%という数字は、一般人の内に存在する左利き10%と比べて顕著に高いと言えるのでしょうか。
考え方。
統計学の母比率の検定という考え方を使ってみます。
- 全世界の人々(母集団)の内で、左利きである人の割合が10%。
- 全世界の人々(母集団)から標本として3500人(日本のメンサ会員会員数)を抜き出したときに、左利きである人の割合が20%だった。
- 左利きであるということは、IQが高いといえるのであろうか?
統計学的には、全世界の人々から3500人を抜き出したときに、左利きが20%存在するというのはどの位珍しい事(確率)なのかで考えていきます。
3500人の中に、左利きが20%存在するというのは珍しいことであると言えれば、IQの高さと左利きは関連があると言えます。
逆に、3500人の中に、左利きが20%存在するというのは珍しいことではないと言えればIQの高さと左利きは関連があるとは言えなくなります。
結論。
左利きは、IQが高いと(かなり)いえます。
図形的にみると、以下の正規分布曲線で考えることができます。
X軸方向に左から-5から5までの数字が並んでいますが、X軸が0の所が発生確率が高くなり、5かあるいは-5に向かえば向かうほど発生確率が低くなっていくと理解することができます。
今回計算で算出できたX軸の値は、19.7でした。X軸の右側の5を越えて、更に発生確率が低くなっていること考えられます。
全世界の左利きが10%である場合に、ある集団の左利きの割合が20%であるということは非常に発生確率が低いということができます。
今回の場合は、ある集団というのがメンサ会員団体ですので、結論として左利きはIQが高いといえます。
計算方法
以下は、統計学的にこんな計算をしてみましたよという内容です。ご興味がありましたらご参考ください。
帰無仮説: 左利きはIQが高いとは言えない。(メンサ会員の内で左利きである人の割合は10%である。)
対立仮説: 左利きはIQが高い。
左利きであるかないかの2者択一(ベルヌーイ試行)であるので、標本における左利きの比率分布は二項分布に従うと考えます。そして、標本数nが3500であり、標本の内で左利きである標本比率Rが0.2(メンサ会員の内で左利きの割合)であるので、nR(1-R) >= 10となります。その為、標本比率分布Rの二項分布は、正規分布で近似できるものと考えられます。(一般的に、np(1-p) >= 10 (pは確率)であれば、二項分布は正規分布に近似できると言われています。)
つまり、全世界で左利きである人の割合(0.1)をpとすると、標本比率Rの分布は、正規分布N(p, p(1-p)/n)に従います。
この正規分布を平均が0で分散が1となるように、以下のように計算します。
Z = R - p / √p(1-p)/√n
- Rは、標本比率。今回の場合はメンサ会員の左利きが20%なので0.2。
- pは、母比率。今回の場合は、全世界の左利きが10%なので0.1。
- nは、標本数。今回の場合は、メンサ会員が3500人なので3500。
上記で求められたzは、平均が0で分散が1である標準正規分布N(0, 1)に従います。
計算すると Z = 19.7202659437
このZを検定統計量とします。
有意水準を5%とすると正規分布表より、Z>=1.96のときの確率が2.5%となるので、棄却域は以下となります。
Z < -1.96 or 1.96 < Z
今回のZは、19.7以上であるため帰無仮説(左利きはIQが高いとは言えない)は棄却されました。
あとがき
全世界で左利きが10%というのは、Wikipediaに記載があったので引用元の資料を確認した所、1977年の研究「Left-handedness.」で10%だったという調査があるようです。
また、2019年に行われた調査でも左利きは10%ほどだったようです。
残念ながらメンサ会員の左利きが20%という数字の根拠がインターネット検索では見当たりませんでしたが、どなたかご存知でしたらご連絡おまちしております。
それでわ、ごきげんようー。